mirage of story
〜4〜












『――――――イル.....』






遠くの方から、声が聞こえる。











『――――――ライル......』






声がする。
声が、澄んだ美しい声が自分の名を呼んでいる。

ッ。
聞こえてくる声。
それと同時に甘く切ない温かな感情とそれと相対する辛く哀しい冷たい感情がライルの中を一気に駆け巡る。









(..........ルシアス)




無意識に浮かぶのは一つの名。
それは大切な人の名。

浮かぶその人の名に彼の胸は大きく脈打ち、締め付けられるような感覚に襲われる。








(これは夢か)



――――。
夢だということはすぐに分かった。

現実なはずは無い。
ルシアスは、もうライルの傍には居ない人。
手の届かない遠い存在になってしまったのだから。 








『ライル......』




あぁ。
この瞳で彼女の姿を捉えたい。
この手で彼女を、ルシアスを抱き締めたい。



ッ。
そう思うが叶わない。
ただ彼には彼女が自分の名を呼ぶ声だけを、もどかしい衝動を押し殺して聞くだけしか叶わない。







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