mirage of story
〜9〜







眠りに堕ちた。
深い深い眠りに、静かにそして緩やかに。


そして俺は夢の中で、小さな男の子に会った。






その男の子は靴も履かずに、必死にただ必死に何かを追い掛け走っていた。

パタパタ....小さな足音がその必死さを物語る。







『──────待って......行かないで』



悲痛な弱々しい声が、頭の中に流れ込む。



地べたを踏み駆ける、男の子の足からはじわじわと血が滲みだしてくる。

見ているだけで......痛々しい。




でも、男の子は走る足を止めようとはしない。
ただ前に、前に。



待って。行かないで。 

僕を、置いていかないで。



ただ、その声だけが虚しくも哀しく響く。







(─────これは......俺?)




夢の中の現実を前に、カイムは思った。

今、自分の前で必死にただ必死に走っているこの男の子は紛れもなく過去の自分の姿だ。
そうカイムは気が付いた。 








『待って.....行かないで。
僕を、置いていかないで。

─────お父さん』






 
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