mirage of story
待って。行かないで。
この一人で、不安でどうしようもないこの感情。
カイムには、覚えがあった。
(........これは、あの時の)
男の子は、まだ走り続ける。
追い掛けるその先にあるもの。
見えはしないけれど、カイムにはその先にあるものが分かった。
見えない....見えない闇の先。
『─────お父さん.......』
男の子の声は、もう擦れてきていた。
足元もフラフラして、倒れてしまうのではないかと心配になる程、弱々しかった。
蘇るカイムの中の記憶。
(.........あの日、俺はあんな風に─────父さんを追い掛けていたのか)
まだ幼い少年だったカイム。
父が大好きだった。
カイムの父は、魔族でお城に勤めていた。
だから忙しくてあまり家には帰って来なかった。
だけど、それでもカイムはたまに帰ってくる優しい父が大好きだった。
大好きで、大好きで。
いつかは父みたいになりたいと思っていた。
たまにでも、忙しい合間を縫って帰ってきてくれて疲れているだろうに、自分と遊んでくれる父が本当に大好きだった。