mirage of story
「そうだ....ここは聖術で守られている。
ここに居れば、安全だ!」
「今.....ここから出たら、魔族に殺される!
だが此処なら、魔族は手を出せない」
街の人達は口々に、そう言い出す。
まだ少し動揺の色が伺えるものの、守られているという安心感に彼等の表情からは深刻さが感じられなかった。
「─────さぁ、旅のお方。心配なさらずにおやすみ下さい」
安堵する人々を前に、未だ一人深刻な顔をするカイムに老人は言い切った。
「此処は安全です」
そして老人は、一人取り乱すカイムを宥めて背中を軽く押してカイムの部屋の前へと連れていく。
「奴らの力は、そんなに甘いもんじゃないッ!
早く、この街から離れないと.......」
カイムは、事の重さを伝えようと再び叫ぶ。
だが、無情にも街の人達は『この場所は守られている』と安心しきりカイムの言葉に、耳を傾けようとはしない。
カイムの悲痛な叫びは、ただの心配性な旅人の戯言にしか過ぎなかった。
(この街の人達は魔族を、ロアルを甘く見過ぎている!
聖術だか何だかで、守られているということを過信しすぎてる)
カイムの頭の中に、カイムの村が消え去る瞬間の映像が嫌に鮮明に過った。
(.......このままじゃ、この街も─────消える)