mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
 
一人が呟く。

すると、その言葉が谺するかのように
周りから『終わりではない』、その言葉が沸き上がる。





それは、希望の谺。

絶望を前にした、小さな希望の道だった。




『終わりなんかじゃない』


そんな希望の谺が響き渡る中、老人はたった今消え去った街を遠くに見つめて

皆に聞こえないような声で呟いた。





「────どうかご無事でありますように。

この街を救った、幼き二人の救世主よ。
そして......我が娘よ」





その言葉は、自分たちを生の道へと導いてくれた救世主である二人の旅人たちへ。


........皆はまだ気が付いていない、唯一欠けてしまった街の仲間──────自分の娘である

ネビアへ向けた言葉だった。






希望が谺するこの場所に、彼等と彼女の姿はなく

今、この場所に立つ彼にとっては
ただ無事を祈ることしか出来なかった。








「────さぁ、いつまでもここに居ても仕方がない。


我らは今から、新たな地を探す!
皆が平和に暮らせる.........我々の新たなる始まりの地へ!」





そして老人は、決意をしたように消え去った街に背を向けて
希望に燃え立つ街の仲間へと呼び掛けた。


老人のその言葉は、その場に居る全ての者へと届く。






「──────さぁ、行くぞ」






消え去った街の住人たちは歩き出す。

新たな未来を描いて、先の見えない地へと旅立つ。






 
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