mirage of story
 
 
 
 





 
「は、はい!姫様!」




その威圧の意に圧されて男はもう何も言えなくなった。

ッ。一刻も早く姫様の命令に従わなければ。
そんな気持ちに駆られたのか、男は直ぐに準備をすべく家の中へと走り去る。







「........」



「.......ルシアス?」




周りが何も言葉を発することの出来ないような空気。
ライルは恐る恐るルシアスの名を呼んだ。


ッ。そんな声に反応して彼女は視線を向ける。








「みんな、ごめんね。
私、お城に戻らないといけなくなっちゃった。
だから今日は、ここまでね?」




ルシアスは、そう言うと今までの緊張が一気に解けたように笑った。

――――。
あどけなさの残るその笑みからは、先程の威厳ある姿はもう見えない。



ッ。
だが子供達は、彼女のその笑顔に何だかいつもと少しだけ様子が違うのを察したらしい。

彼女の言葉にぎこちなく首を縦に一振りすると、後ろを向き一斉に走り去っていく。






――――。
今まで姫としてのルシアスを見たことがない子供達は、頭の中が混乱してしまったのだろう。

その場に残されたのは、ルシアスとライル。
そしと倒れたままの奴隷と呼ばれたその人だけになる。






「.........」




風の音も遠くで騒ぐ子供の声も聞こえてくるのに、何だかこの場には凄く静かな時間が流れていた。










「ライルは私と一緒にお城に付いて来て?
.......父様に、話さなきゃいけないことが出来たから。ライルにも一緒に来て欲しいの」



ルシアスは、いつになく静かな声でそう言った。







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