mirage of story
最もな意見だった。
きっと誰もがそう思ったはずだった。
「..........いや、只でさえ人手が少ない今キトラも貴重な戦力だ。
欠けさせるわけにはいかない」
判っていた。
ライルにだって自分が今キトラに強いることがどれだけ残酷であるかくらい判っていた。
――――。
だが彼は冷静に言う。
その顔に張り付く沈痛な表情は隠し切れはしないが、それでも険しく威厳を保った表情で。
「あいつも軍人だ。
自分の感情で任務遂行が妨げられてはならないことくらい分かっているはずだ」
「........はい、隊長」
自分が鬼にさえ見えた。
だがこれは兵の誰もが教えられる軍に属する者の掟であり宿命。
妥協する訳にはいかない。
例えキトラのようなまだ少年とも言える幼い者であってもこの掟は絶対的なもの。
変えられはしない。
「お前達も準備に入れ。
明日から、忙しくなる」
ライルはこちらを見る兵達を一瞥する。
ッ。
そしてそのまま背を向けると、沈痛な表情をその顔に残したまま部屋を後にした。
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