mirage of story
よいしょっと。
そのままカイムを担ぎ上げる。
ジェイドは長身で体格がいい。
なのでそんなに長身ではない彼を軽々と持ち上げてしまう。
その姿は少し頼もしく、ほんの少しだけ彼の株は上がることだろう。
一方、担ぎ上げられたカイムはぐったりしたまま。
だが体温はちゃんとある。
顔色の悪くない、というか寧ろ血行が良い。
そう。
息だって、ちゃんと。
(ん?)
ジェイドは担ぎ上げたカイムの呼吸の音に思わず顔をしかめる。
苦しそうな呼吸。
.........とは程遠い、スヤスヤという穏やかな音。
「........」
ジェイドは一瞬言葉を失い、そして思った。
一瞬だけしかめられたジェイドの顔が、苦笑に変わる。
「──────もしかしてこいつ、ただ寝てるだけなんじゃ」
そのジェイドの呟きは消えることなく苦笑と共に部屋の中をしばらく漂った。
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