mirage of story
 
 
 
 



 
 
 
連れて行けばそれだけ自分の身に降り掛かる危険が大きくなる。
それだけで利は無かった。

なのに────。









(あぁ、分かんねぇな。
俺は何を考えてんだ)




なのにジェイドはシエラとカイムを連れて共に逃げてきた。
何の利もない。
そう分かっていたはずなのに連れてきた。



気付いた時にはもう彼等と共に街の中を走っていた。
彼等と共にこの危機を脱しようと思考を巡らせていた。






........。

何故だ、何故?

彼は.....ジェイドは、もう人と馴れ合うことに関わることに疲れて全てを捨てて無防備に身を投げ出した。
他人と深く関わることを自ら止めた。
そんな男であるはずなのに。


なのに、なのにどうして会って数時間の赤の他人同然の彼等を自らの意志で助けるのか。
自ら関わりを深めたのか。






彼等に興味を持ったから?
シエラがあの水竜の指輪を持っていたから?
それとも、ライルたちに追われている彼等に共感を持ったから?



いや違う。
そんな下らない理由じゃない。

何かは分からないけれど、もっとずっと大切な理由がそこにはあるような気がした。








(ああぁ....分かんねぇ)




いくら考えても答えは出てこない。
解けない疑問が頭の中でグルグル回るだけ。

ッ。
埋めた腕の中で靄々した頭を深く抱え込んだ。








ジェイド。

彼は普段ヘラヘラとしていて何も考えてないように思われがちだが彼の頭の中では常に様々な思考が複雑に交錯している。
実は凄く真面目なのかもしれない。





 

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