mirage of story
この平和な村を襲う襲撃者。
―――――。
彼女には思い当たる節があって思考を巡らせる。
(まさか)
巡る思考の先には哀しい青い蒼い色。
まだ真新しい記憶。
ッ。
先刻森の中で出逢った少年の存在。
ライルという少年の存在。
気に掛かるのは、彼が最後去り際に発した言葉。
シエラに彼女に向けられたその言葉。
(.......彼はこうなることを知っていたわ)
浮かび上がる可能性。
考えれば考える程に色濃くなる、彼がライルが襲撃者である可能性。
(そんな......。
まさか本当にあの人が?)
信じたく無かった。
会ったばかりの一度会っただけの赤の他人であるはずなのに、彼が襲撃者であると信じたく無い。
何故だろう?
何故かシエラには彼が悪人には見えなかった。
ただの他人とは思えなかった。
"―――俺は絶対....この世界を平和にしなくちゃいけないんだよ"
先刻前、彼は確かに言った。
彼がそれをどういう意味で言ったのかは分からないけれど、戦うことと平和は彼女の中でどうしても結び付かない。
平和にしたいと願う者が何の罪もないこの村の人々を襲うなんて、信じたくは無かった。
(.........)
だが彼は今日はこの村に近づかない方がいいと言った。
それはこの状況になることを知っていて言ったのではないのか?
巻き込まれぬよう忠告のつもりでそう言ったのではないのか?
――――.......。
思考を巡らして幾らの時間が経ったかは定かでない。
その間に立ちこめていた煙が次第に薄れていき、シエラは再び人影の方へ視線を戻す。
........。
煙というベールが剥がれていく。
ッ。
(どうして、貴方が)
煙の中から現れた人影。
その人影は彼女の中に在る人の像と残酷にもばっちり一致してしまう。
ッ。
瞳に飛び込むは蒼。
剥がれた煙のベールの先にはあの蒼い瞳の彼が居た。
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