mirage of story










「これ、水です。

.......俺、シエラを寝かせてきますからお願いします」




明らかに説明不足のまま、カイムはぺこりと一礼をしてシエラを背負ったまま近くに張られたテントに歩き出す。



テントの前に作られたスペースにある煌々と燃える焚き火の炎。
その傍らの木に、相変わらずの仏頂面で凭れかかるロキ。

その横を背中で眠るシエラを気遣うように、ゆっくりとした速さで通り過ぎテントの中へとカイムは入っていく。











ッ。

カイムはそこまで来ると、ふわりと優しい手つきで背負っていたシエラを地面へと下ろす。
そして近くにあった布を彼女の上にかけ、静かに寝かせてやった。










「..........」


その様子をテントの揺れる白い布の隙間から見るジェイドは、何かが先程とは明らかに変わっていることに気が付いて密かに眉を潜める。





何かが変わった。
ほんの先程、此処から出て行く前とは明らかに。


そう感じてテントの中の二人を凝視するが、その変化は目には見えない。

纏う雰囲気というのだろうか。
遠くから見る彼は、何かつい先程の彼とは別人にさえ思えた。









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