あおいぽりばけつ
「あ、と……バラ、んん……いや、かすみ草だけの花束って変ですかね」

悴む手を揉みながら自分の言葉を待つ店員。そんな店員を待たせている事に少しだけ罪悪感に駆られる。

「いえ、変ではないですよ」

ネイビーのカジュアルスーツ。スーツなんて着慣れた物なのに何処かむず痒くて、耳の下を擦りじゃあそれでと呟いた。

花の香りが広がる店内をぐるりと見渡して、自分と同じ様に花束を待つ男性達が目に入る。そわそわと腕時計を見る者、興味も無いだろうには時間潰しの為に花を凝視する者、携帯をいじる者。皆、同じような理由でここに来ているのだろうと、よく分からない仲間意識にほっと胸を撫で下ろす。

ふと目を引いた。瞬間、背中から心臓一突き。これは、と全身に電気が流れた。

花束を作り出そうとしていた店員を急いで呼び止める。

「すいません、この花を一輪入れることは可能ですか?」

忙しそうに手を動かしていた店員は、嫌な顔一つ見せずに、かしこまりました、と一輪バケツから拾い上げた。店員の胸に抱えられた一輪の花を見て、胸が熱くなる。
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