社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
しょぼんとしていると、名取さんに正面から覗き込まれた。
「なんなら俺の部屋に住む?」
「……えっ!?」
「実はうち、兄貴と住んでたんだけど今度結婚するらしくて、部屋が余るんだよねー」
「いやダメだろー。いい歳の男女がふたりきりでなんてさ」
しれっと提案した営業マンに、森さんが至極まっとうな突っ込みを入れる。すると名取さんは一瞬目を丸めてから「ぶはっ」と噴き出した。
「いやいや! ありえないでしょ! だって前原ちゃんですよ? 反応しないっすよー」
入社して一ヶ月が経ち、それぞれの社員の人となりがわかってきたわけだけど、名取さんに関しては最初の印象から一貫して変わらなかった。飲み会の時に露見したデリカシーのなさは、アルコールのせいではなく生来のものらしい。もっとも、そんな態度も私に対してだけみたいだけど。