社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
「社長、あちらに『KUROKURO』の方がいらっしゃってます」
声をかけると、社長は周囲の女性たちに「失礼」と微笑んで、私と一緒に人が少ない壁際へと足を向けた。
「大丈夫ですか?」
手にしていた社長の分のドリンクを差し出すと、彼は珍しく長身の背をわずかに丸めた。
「……だから嫌いなんだよ、こういう場は」
低くつぶやいて、カップに入ったハイボールに口をつける。
そりゃあ、普段笑わない人が商談もしないのにビジネススマイルを浮かべ続けていたら疲れるよね。
無理して笑い続けて頬が引き攣れていたさっきの社長を思い返していると、項垂れていた顔と視線がぶつかった。
「……助かった」
少し弱った顔で言われて、どきりとする。