社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
社長はKUROKUROの担当者がこの場にいないことを、私が彼を救うために嘘をついたことを、咎めなかった。
長身をコンクリートの壁にもたせかけ、長い指を私に向かって伸ばす。
「前原、お前……」
指先が私の唇に触れる直前、社長の目が私の後ろに向けられた。次の瞬間、開かれていた瞼が、つまらなそうに半分落ちる。
「……なんでお前らがいるんだよ」
「新井さん、相変わらず目立ってますね」
振り返ると、すぐそばに設置された三人掛けのソファ席に、スーツ姿のふたりの男性が座っていた。いずれもびっくりするくらい顔が整っていて、社長とは違ったタイプのイケメンだ。
「この展示会、うちが一枚噛んでるんで」
眉が凛々しくどこか上品な雰囲気の男前が言うと、もう一方の華のある王子様みたいな男性が面倒そうに口を開く。
「俺はボスの代理で。……帰りてぇ」