社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 おそるおそる目を上げると、見たことのない表情が浮かんでいた。

 眉間にしわを寄せて、拗ねているような怒っているような……でも、喜びを噛み殺しているようにも見える顔。

「結愛」

 ふいに名前を呼ばれて心臓が大きく跳ねた。

 まただ、と思う。

 またいつかみたいな色気を漂わせて、社長が顔を近づけてくる。

「あ、あの、酔ってますか?」

 どうしていいかわからないまま目を逸らそうとするけれど、さっきよりも優しい指先に頬をなぞられ視線は軌道修正される。

「酔ってる。けど、酔ってない」

「……え?」

「……酔った勢いに任せてる面もあるが、間違いなく、俺の意志だ」

 そろりと私の唇をなで、社長はつぶやく。熱っぽい瞳に射抜かれて、どくんと胸が音を立てた。

「キス、していいか?」

「っ」

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