社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

「しゃ、社長」

 伸ばした腕は、大きな体を前にまるで無力だった。

「結愛」

 名前を呼ばれると、身動きができなくなる。私を捕らえるような視線を注ぎ、社長は再び顔を寄せてきた。

 唇の柔らかさを確かめるようなキスに、頭が沸騰しそうだ。

 唇で唇を挟まれ、ついばまれ、舌でなぞられる。

 固まったまま動けなかった。ただ唇を閉じたままされるがままになる。嬉しいような切ないような気持ちになりながら、頭のなかでは「どうしよう」と繰り返していた。

 どうしよう、この状況。

 もしかして、このまま……?

 唇を覆っていた感触が、さらに下りていく。顎から首にかけてをなぞられて、体が跳ねた。ずるずると背もたれから落ちていきソファに組み敷かれる。

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