君が夢から覚めるまで
21.わたがし
打ち上がる花火を香帆は見つめる。
その横顔を怜は目に焼き付けるかのように強く見つめる。
一年前は…隣に並んで歩くだけで十分だった。
だが、どんどん贅沢になっていき、どんどん我儘になっていく。
もう横にいるだけじゃダメになって来ている。
花弁柄の浴衣が世界で一番似合うのは香帆だと思った。
その色香に胸がギュッと切ないぐらい締め付けられた。
赤い髪飾りは、香帆そのものだった。
気の利いた言葉も出て来なくて、ただただ心臓の音がうるさくて、痛くて、もどかしくて…。
どんな風に、この想いを伝えられたらいいのだろう…。
「キレイ…」
そう呟き花火を見上げる香帆を後ろから抱き締めた。
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