お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「そんなことないだろ。兄貴が俺を手もとから離さなかったんだろうが」
「それはお前の記憶違いだな」
「いいや、そうじゃない」
再び始まったふたりの攻防戦を千花が「あの!」と発したひと言で止める。
一瞬しんと静まったあと、一樹と修矢は同時にぷっと吹き出した。
(あ、その顔……)
修矢は、病院で子供に笑いかけていたときとよく似たいい笑顔をしていた。
千花の胸がトクンと音を立てる。
修矢のそんな顔をもっと見たい。そうやって笑う修矢のそばで、自分も笑っていたい。
千花は、そう素直に感じた。
「さてと、それじゃ本当に帰るよ。千花さん、結婚式でまた会おう。ま、その前に俺に乗り換えるのも大歓迎」
ふざける一樹の胸を修矢の拳がトンと押す。
「いい加減にしろ」
「へいへい。とにかくお幸せに。じゃあな」
まるで嵐のごとく一樹が去ると、部屋は再び落ち着きを取り戻したように静寂となる。
せっかくコーヒーを入れたからと、千花は真新しいソファに修矢と並んで腰を下ろした。