お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
焼鳥屋一休は幸助が好んでたまにでかける店で、千花も何度か付き合って行ったことがある。カウンター席が八席と小上がりの座敷にテーブル席が四つ。決して広いとは言えない店内は、いつもお客で賑わっている。OLらしき女性の姿もあったが、基本的に男性客が多いように見えた。
それは二週間ほど前のことだと言う。
煙が上るカウンターで隣り合わせたのは、幸助のようにひとりで来店した同年代の男性客だった。人の好い幸助はすぐにその男性と意気投合。酒を酌み交わし、焼き鳥をつまみに話が弾んだそうだ。
それからも何度か一休で会うようになり、「なかなか結婚の気配がなくて困ったものですよ」と男性が息子のことをため息交じりに話し始めた。「うちにも娘がいるんですが、似たようなものです」と幸助が零した言葉に男性が反応。「それならば、ぜひうちの息子と」と話が急展開に。そうしましょうと、その場で安易に見合いの話が結実してしまった。
ところがよくよく聞いてみれば、その男性はわたせキッチンとは道路を挟んで真向かいに建つ『久城総合病院』の院長・久城智弘(くじょう ともひろ)だと言う。しかも、神の手をもつと名高い心臓血管外科医。数々の難しい手術をこなしてきた、その道では超がつくほどの有名人だ。
どこかで見たことがあると幸助も最初は思ったそうだが、それも当然だった。医療を特集したテレビ番組などへの出演歴があるのだ。