お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

◇◇◇

原宿の表参道に広がる一万坪の社。
澄み渡る秋の空には真っ白な絵の具を落としたような雲が、いくつかぽっかりと浮かぶ。

十一月十日。
千花と修矢の結婚式が、友坂神社で執り行われようとしていた。

天空高く響き渡る神楽の音色に先導され、開放的な神前へ向かう参進の儀は、友坂神社の庭の池に架かる橋をゆっくりと進んでいく。

経験したことのない厳かな空間の中で、千花は息苦しさを覚えた。胸いっぱいに息を吸い込んでも、酸素を取り込めている気がしない。

白地の艶やかな緞子地に生成り糸で施された相楽刺繍の白無垢姿のせいもあるかもしれないが、それだけではない。なによりも、これが千花自身の結婚式だからだろう。

千花は前を向いたまま動かすことのできる目だけで、隣を歩く修矢を盗み見た。

グレーと黒の紋付き袴姿の修矢は、いつも以上に堂々として神々しくすらある。通った鼻筋は美しい傾斜を描き、意志の強そうな切れ長の目もとが真っすぐ前を見据える。糸を限界まで突っ張ったような空気の中にも負けない凛としたオーラが、修矢にはあった。

千花がこっそり見ていることに気づいたか。修矢がふと視線を千花へ向ける。その眼差しにほんのわずかに笑みが浮かび、千花の鼓動がドクンと弾けた。

(私、本当にこの人と結婚するんだ……)

結婚は一生しないと思ってきた千花には、今の状況はいまだに夢のようだった。

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