お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

「結婚すればキミも同じ名字になるだろ」


修矢の口から出てきた結婚の言葉が、千花の胸を打ち抜く。そのうえ、ファーストネームで呼べとは、いきなりハードルが高い。


「このお話、断らないんですか?」


千花はてっきりそうされるのだと考えていた。千花が断るまでもないと。
わたせキッチンでのほんの少しのやり取りでさえ、千花に笑いかけたりしないのだ。つまり相手は、千花には興味がない。

もっと言ってしまえば、修矢にとって千花は嫌いなタイプなのではないか。無愛想な態度がそれを物語っていた。
誤字事件の前にも、指先が擦り切れていた修矢に絆創膏を無理やり貼ってあげたことがあったが、そのときもにこりともしなかった。

修矢の強い視線に見つめられ、千花は身動きができなくなる。まるで見えない糸で身体中を絡めとられてしまったようだ。

そのとき不意に強い風がふたりに吹き付け、髪飾りにしていたスイートアリッサムが飛ばされて千花の足もとに落ちた。屈んで取ろうとしたそばから、修矢が拾い上げる。


「すみません。ありがとうございます」

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