年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
家の付近でタクシーを降りた私達は、家の方向を向いて歩き出そうとしたのだが__


「…なあ、望美」


呼び止められて振り返ると、輝が緊張した様子で立ち止まる。


「…ん?どうかしたの?」


やっぱり止めるとでも言いたくなったんだろうか、と首を捻る。
だけど、輝は側に近寄ると私の腕を握り、あの…と強張った顔つきで声をかけてきた。


その様子に胸が鳴る。
彼がまだ何も言わないうちから何だか言いたいことが分かったような気もして、咄嗟に緊張が走った__。


(何だろう…。もしかしてプロポーズでもするつもり……?)


家に行く前に言っておきたいことがある…と発する輝の唇を見つめて心臓が踊りだす。
ああやっとだ…と思っていると、甲高い声で「あれぇ?」と聞こえた。


ビクッ!と背筋を伸ばして振り返って見ると、弟の郁がバス停から歩いて帰ってくるところだった。

「こんな所で何してんだ?」と声をかける郁は、輝を見つけ、「こんばんは」と挨拶した。


「ああ…今朝はどうもありがとう」


挨拶よりも先にお礼を言う輝。
私はガクッと肩を落とし、じろっと郁を睨み返す。


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