年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
「何だよ。……あれ?」


バッドなタイミングで現れたことも知らない郁は、私に目線を向けると瞬きを繰り返した。


「…なんか、今朝と雰囲気違わないか?」


やたらめかし込んでどうした!?と問われてしまう。
いきなりそっち!?と胸が竦み、別にいいでしょ!と誤魔した。


郁の視線を避けるように身を逸らした。
出かけた時は違う雰囲気の私に気づいたらしい郁は、チラリと輝にも視線を注いで__。


「……もしかして、俺、お邪魔でした?」


もう少し後から家に帰ろうかと気を遣いだす郁を止め、もういいから帰るわよ、と背中を向けた。


「へいへい」


郁は慣れた感じで家に向いて歩きだし、私達は困ったように顔を見合わせてからその背中に付いて行く。

輝がはぁー…と深い溜息を吐き出す。そして、諦めたように、「また後でいいか」と呟き、私の手を握った。


ドキンと胸を弾ませながら彼を見上げ、お互いに目を見合わせて微笑み合う。

やっと、というところで…と恨めしくも感じるが、まあ考えてみたら、こんな道端でされるよりももっとマシな場面の方がいいかも…と思い直し、二人で並んで家へ向かった___。


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