年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
「俺はもうこれ以上、姉ちゃんに不幸を背負って欲しくなかったんだ」


借金地獄から解放してやりたかった、と言う郁は、日曜日の午後に輝と偶然出会った…と言った。


「俺から声をかけて苦言を呈させて貰った。あんたが早く嫁に貰ってやらないと、うちの姉はこのままではいつまでも不幸です、と訴えたんだ」


郁には以前、輝の写真を見せたことがあるから顔を覚えていたらしい。
そんなことをするなら見せなければ良かった…と反省し始め、本当なの?と輝を窺う。



「ああ…まあね」


少し微笑みながら彼は認め、でも、それで自分も目が覚めました、と両親に告げた。



「あの、俺は……」


輝は自分の身の上を話し始めた。
自分の両親は結婚もしておらず、輝自身は幼い頃から孤独で育ち、両親からの愛情も貰えずにいたんです…と語った。


「俺に比べて望美さんの家庭は健全で、非の打ち所がないように見えていたんです。…だから、俺はなかなか言い出せなかった。俺みたいに愛情が何かも知らない男と一緒になっても、彼女が本当に幸せになれるんだろうかと思うと不安で、思いきって前には足が踏み出せなかったんです。
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