年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
(あれから三年か…)


早いな…と思いながら喫茶店で彼が来るのを待つ。
窓の外は薄っすら雪景色で、これでも暖冬だと言うから、マジですか?と問いたくなる様な気配だった。


カランカランとドアを開けるとカウベルが鳴り響く。
その音に顔を向けて手を上げると、背の高い彼が私を見つけて走り寄って来た。


「ごめん。待った?」


ネイビーとホワイトとブラウンのストライプマフラーを巻いている彼が息を切らして訊ねる。
私は彼の着ているダウンの袖に雪がくっ付いているのを見つめながら、「ううん別に」と肩を竦めた。


「輝も何か温かい物でも飲めば?」


自分はココアを頼んで堪能中だ。
彼は椅子に座ると、そうだな…と言いながらメニューを開き、カフェオレを一つ、と注文した。


それから徐ろにマフラーを外し、ダウンジャケットを脱いで椅子の背に掛ける。
身長の高い彼は、肩幅も広くて胸板も厚い。脱ぐとそれが際立って見え、なんだか少し胸が鳴る。


(三年も経つのに、相変わらずときめくな)


< 3 / 194 >

この作品をシェア

pagetop