年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
(…だけど、輝には婚約者がいたんだ……)


あの熱海のホテルで会った女性。
あれは単なるお見合いの相手ではなく、多分前から決まっていた筈の婚約者。

彼の父親はその彼女から私のことを聞いて驚き、私の周辺を調べて、掴んだ弱みをネタに別れ話を切り出そうとした。

その為に、何らかの手を使ってメーカーに圧力を掛けた。
そして、外部の交渉役をしている輝が日本を離れる機会を作り、その間に私と対話する時間を持った。



(それは私の予想だけど…)


多分、そんなに間違ってないと思う。
輝はそんな立場にいる人の子供なんだ。

私みたいに、借金がある家庭の子供なんかじゃない。
ちゃんと健全な家計の元に育って、両親の愛を受けて生きてきたに違いない。


(……だから、輝のお父さんが私の家庭状況を受け容れられる筈がないんだ)


そうよね…と呟く側から涙が落ちる。
こんな時に限って輝からは一切連絡もなく、勿論、自分からも掛けれずに落ち込んだ。


(輝……貴方は私のことをどうしたいと思ってるの?)


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