3秒後、きみと恋がはじまる。
「茜くん、おはよう」
にっこり笑ってそう言えば、周りで特進科の女の子たちが騒ついたのがわかった。
「え、茜くんって呼んだ?」とか、「あの子普通科の子だよね、なんでここにいるの?」とか、いろんな囁き声が聞こえてきたけれど負けないぞ。
「…ああ」
ふい、と興味なさげに私から視線を外した彼は、黒い鞄の中からペンケースや教科書を出して机にしまっている。
「茜くん、A組なんだね」
「うん」
「…い、いつもこのくらいの時間に登校してるの?」
「そう」
私が何を言っても2文字しか返してくれない彼は、本当に私に興味がないらしい。
ちょっとめげそう…。
「あ、茜くんも私のこと桃って呼んで!」
「…」
つ、ついに返事すらしてくれなくなった…。
やっぱり名前で呼んでって言うのは距離を詰め過ぎたかなぁ。
ーーキーンコーンカーンコーン
しょんぼりしていると、突然チャイムが鳴って。
驚いて時計を見ると、もう朝のホームルームが始まる時間になっていた。
「えっ、遅刻!?」
周りを見たらさすが特進科、みんなもう席についていて、私は慌てて教室を飛び出す。