3秒後、きみと恋がはじまる。


「茜くん、おはよう」


にっこり笑ってそう言えば、周りで特進科の女の子たちが騒ついたのがわかった。

「え、茜くんって呼んだ?」とか、「あの子普通科の子だよね、なんでここにいるの?」とか、いろんな囁き声が聞こえてきたけれど負けないぞ。




「…ああ」


ふい、と興味なさげに私から視線を外した彼は、黒い鞄の中からペンケースや教科書を出して机にしまっている。




「茜くん、A組なんだね」

「うん」


「…い、いつもこのくらいの時間に登校してるの?」

「そう」



私が何を言っても2文字しか返してくれない彼は、本当に私に興味がないらしい。


ちょっとめげそう…。



「あ、茜くんも私のこと桃って呼んで!」

「…」


つ、ついに返事すらしてくれなくなった…。
やっぱり名前で呼んでって言うのは距離を詰め過ぎたかなぁ。



ーーキーンコーンカーンコーン

しょんぼりしていると、突然チャイムが鳴って。
驚いて時計を見ると、もう朝のホームルームが始まる時間になっていた。


「えっ、遅刻!?」


周りを見たらさすが特進科、みんなもう席についていて、私は慌てて教室を飛び出す。


< 12 / 265 >

この作品をシェア

pagetop