元ストーカーの夫は、
12.アルバム
────更にもう片方の手でも、トン、と拳を握って彼の胸を叩いた。
それでもまだ、足りなくて。
彼の胸を、両手で交互に先程よりも少し強く叩く。
遥はただ黙って、それを受け止めていて。それも妙に癪にさわって、私は何度も彼の胸を叩く。
「………私がっ……どれだけ……っ」
───……苦しかった。
遥が離れて行くんじゃないかって、怖くて苦しくて堪らなかった。
ボロボロとまた涙が溢れて来て、今まで抑えていた感情が一気に溢れ出す。
「じゃあ、どうしてっ……、二人でホテルなんかに行ったの?どうして、冬香さんの写真のファイルに鍵なんか付けてあったの?どうして、私にっ、髪を切って欲しくなかったの?どうして……、なんでっ、毎回必ず避妊をするのっ?どうして……っ、どうして、いつも、遥は私に対して何かを諦めているのっ……!」
一度溢れてしまえば、もう、止まらなくて。
泣き崩れながら彼の胸を叩き続ける私を、遥が目を見開いて見ている。
戸惑いながらも私の両手をそっと掴んだ遥は、私の顔をジッと見つめたかと思うと、クシャリと顔を歪めて私をぎゅっと抱きしめた。
「……ゴメン、ゴメン、なっちゃん。まさかなっちゃんを、そんなに不安にさせてたなんて、全然……気付いてなくて……っ、本当にゴメン……!」
ずっと、胸の内で抱えていたモヤモヤを、今やっと吐き出す事が出来て、───私は子供のように泣き出してしまった。