【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「別に、そんなことないです」
気づかれてしまったことが情けなくて、思っていたよりも低い声が出た。
「あ……ごめん、なさい」
彼女が、萎縮したように身を縮め、申し訳なさそうに下を向く。
俺は、彼女に背を向け、逃げるように運動場へ向かった。
ーーーなんで?
その言葉が、頭の中を支配している。
俺のどこに、そんな素振りを見つけたんだ?
ていうか、静香先輩とは話したことも少ししかないし、普段の俺を知っているはずがない。
それなのにどうしてーー気づかれてしまったんだろう。
考えれば考えるほど訳が分からなくなって、頭痛がしてきた。
もう考えることを放棄しようと思い、髪をくしゃりと掻いた。