【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「ちょっと、そんな目擦ったらダメだよ」
「えっ……」
「ほら、こっち向いて」
腕を掴まれて手を動きを封じられたと思ったら、彼が制服のポケットから取り出したハンカチを私の頬に当ててくれた。
反射的にそれを受け取って、彼の方を見つめる。
「目、腫れちゃったら、綺麗な顔が台無しでしょ?」
ふわりと微笑んだ彼に、美しいと思った。
綺麗な顔をしているというのもあるけれど、そうじゃなくて……彼の放つ、オーラみたいなものが。
それにしても……なんて良い人っ……。
「すみません……ありがとうございます」
私の涙で濡れたハンカチを返すわけにもいかず、一旦受け取って頭を下げる。