【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
……最低だ。
勝手に惹かれて勝手に裏切られた気になって、失望したなんて。
自分が情けなくて、静香先輩のほうを見れない。
結局、本当のこの人はどんな人なんだろう。
噂だって……
この人が嘘だっていってくれるなら、今なら俺は——。
「1週間本当にありがとう。また学校でね」
「はい、ありがとうございました……!お先に失礼しますね……!」
視線を上げて、少しだけ静香先輩のほうを見る。
瞬間、バチリと視線が合った。
……え?
慌てて、視線をそらす。
途端、感じが悪かったかと後悔した。
もう一度視線を戻した時には、静香先輩はもう車に乗り込んでいて、ゆっくりと車が発進する。
走っていく車を見ながら、俺はどうすることもできなかった。
知りたい。
静香先輩のことが……。
バスに乗っている間、考えるのは静香先輩のことばかりだった。
自分の気持ちを認めた以上、このまま何もしないなんて嫌だ。
俺はあの人のことを知りたい。