【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


……っ。


自然と溢れてきた涙が、視界を滲ませる。


和泉くんが、そんなふうに思ってくれていたんだと思うだけで、もう今までの苦しみも全てが吹き飛んで行くようで、


変に思われないように、こっそり涙を拭った。



「い、いえっ……私が全部、悪かったので……」



和泉くんが謝る必要なんて、少しもない……。


今まで抱えていた和泉くんへの申し訳なさと後ろめたさが、薄れていくように、心が軽くなった。


目も合わせてもらえないくらい、嫌われてしまったと思っていたから、嬉しくて今にも舞い上がってしまいそう。



「…………どうして、ここにいるんですか?」



和泉くんは、私に顔を逸らしたまま、そう言った。

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