【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「静香ちゃん、もう座っていいよ」
特に気にせず、言われた通り席に着いた。
どうしてみんな、ニヤニヤした顔で私を、見るんだろうっ……?
よくわからない視線の数々に、思わず下を向いた。
「そういうことかよ……」
和泉、くん?
気のせいかと疑うほど、小さな声だった。
意図的ではなく無意識に漏れたみたいなその言葉に、首を傾げる。
どうしたんだろう……?
不思議に思ったけれど、それを聞くのも図々しい気がして、躊躇ってしまう。
さっき少しだけ話せたからと言って、私が和泉くんにとって迷惑な存在なのは、まだ変わらないかもしれないから。
「はい、静かに!!今から説明始めるから、ちゃんと聞いておくように」
結局、私が聞く勇気を振り絞るより先に説明が始まって、肩を落とした。