秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

俺たちには、もう少し時間が必要だと思う。
高校を卒業してから時間が経ってしまったために、仲の良さはリセットされた状態。
彼女が抱いている不信感を拭い、俺がどういう人なのか知ってもらう。

 その上で「好きだ」と伝えよう。
まずはデートを重ねる。離れていた時間を埋めるように、いろいろな話をして、俺のことを知ってもらう。そして、椎名さんのことも少しずつ知っていきたい。

それから俺たちは三回デートをした。

 三回目のデートで決める。これ以上先延ばしにしては、男らしくない。決めるときはバシっと決めたい。

 三回目のデートの帰り道、告白をした。

 心臓が飛び出そうなほど緊張しながら、ストレートに想いをぶつける。いろいろな言葉で回りくどく言うのは嫌だった。
ずっと何年も温めてきた想いを伝えると、椎名さんは控えめに頷き「お付き合い……します」と言ってくれた。

 心底嬉しかった。

 好きな人に気持ちを受け入れてもらえる喜びに溢れ、こんなに幸せなことがあるんだと胸が躍る。自分でも驚くくらいに高揚して、椎名さんを抱き締めていた。

 小さくて細い彼女を抱き締めて、絶対に大事にすると誓った。こんなに好きな人、そう簡単には現れない。

 他の女の子じゃ代わりになれない。この気持ちは揺るぎないものだと確信し、恋人になった椎名友里を心から愛して、大切にした――のだが……

 彼女からの裏切りは、ある日突然訪れた。
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