マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
一時間ほどの立ち話を終え家に帰ると、部屋の掃除をしようと思っていたのに気付けばソファーに座っていて。
昨夜から一睡もしていなかったせいか、少し横になった途端に私は意識を手放していた。
よほど疲れていたのか、眠かったのか。
鳴り響いたインターホンの音にハッと目を覚ますと、慌てて起き上がり壁の時計に目を向けた。
ウソ…もう一時半?私としたことが、やってしまった。
急いで立ち上がるとすぐにモニターを確認する。
するとそこに映っていたのは、真っ直ぐにこちらを見つめているリュウ君ママだった。
心臓がドキンと跳ね上がり、動揺した私は髪を整えながら応答ボタンを押す。
冷静に、落ち着いて。
自分にそう言い聞かせると、普段通りの声色で『はい』と対応した。
『こんにちは、リリカです』
モニター越しに微笑む彼女を見つめ、もう一度はいと答える。
『あの、渡したいものがあるんですけど、今、大丈夫ですか?』
『…あぁ、うん、大丈夫だけど。ちょっと待ってね、すぐ開けるから』
急に来て渡したいものがあるなんて、一体何ごと?
手ぐしで髪を直しながら廊下の鏡で顔を確認すると、寝起きで目が腫れていて自分としてはコンディションが最悪な状態だった。