マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

それでも、心のどこかで憧れはあったんだと思う。

お洒落な靴がたくさん並ぶ店内を見回しているうち、気がつけば食い入るように次々とパンプスを見ては手にとってしまっていて。

自分には必要のないものだとわかっていたのに。
心は単純だ。
とびきり好みのどストライクな靴を見つけ、それを手にしてしまうと、可愛い…履いてみたいな、なんて。いとも簡単に女心が揺れ動いていた。

だけど、高身長の私には…やっぱり必要ないものだ。うん、ないない。
そう思いながら、手にしていたパンプスを元の場所に戻そうとした。

「履いてみたら?」

なのにどういうつもりなのか。すぐ後ろからそんな声が降ってきて。

慌てて振り向いた私からサッとパンプスを奪った大地は、私の背中をやや強引に押し店内に置かれている椅子に座らせると、目線を合わせるように目の前で屈んだ。


「工藤、私の身長わかってるよね?」
「わかってるよ」
「ここのパンプス、全部7センチあるんだよ?」
「だから?」


それがなんなのとでも言いそうな顔で大地は私を見て言った。


「とりあえず履いてみろよ。身長とか気にすんなって」
「…気にすんなって言われても気にしちゃ…」
「いいから、ほら」
「や!ちょっと!」


抵抗する私の足を掴んだ大地は履いていたペタンコの靴を左右スルッと脱がせると、裸足になった足にあっという間に憧れのパンプスを履かせてきた。

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