マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
「ちょっと待って」
手を掴んだまま前に回り込んできた大地の姿に思わず俯いてしまった。
「帰る前に、一つだけ言わせてほしい」
落ち着いた声でそう言われ、私は小さく頷いた。
「さっきは同僚だって答えたけど…本当は間宮のこと、彼女だって言いたかった」
突然の言葉に、俯いていたはずの顔が自然と上に向いた。
「会社が休みの日でも、こうして毎週のように一緒にいて。そんな時間が当たり前みたいになってきてたけどさ」
「…うん」
「俺らの関係性って、ハッキリしてなかったっていうか。切り出すタイミングがわからなくて…ズルズルきちゃってたから。間宮の気持ちもわからないまま、さっきは勝手なことは言えないなって…ああ言ったんだけど」
大地はそう言うと、少し間を空けて。
「でも、俺は間宮のこと、ただの同僚だとは思ってないから」
真っ直ぐに私を見つめ、わかりやすく大きな深呼吸をしたかと思った次の瞬間、大地は想像以上に大きな声で口を開いた。
「俺と、付き合ってください」
驚きと恥ずかしさで顔から火が出そうだった。
それはすぐ近くを行き交う通行人たちがこちらに目を向けるほどの声量で、私たちは一瞬にして注目の的となっていた。
だけど、不確かだった関係が確かなものだったんだと思えた瞬間。
恥ずかしさよりも、嬉しい気持ちの方がどんどん大きくなっていって。
断る理由なんてもちろんなかった。
「よろしくお願いします!」
だから私も、精一杯大きな声で大地にそう答えた。