マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
見ず知らずの人が自分の家の敷地内に入ってくるのは困るけれど、相手は子供だ。
「リュウ君、ボールこっち!」
「うん!」
無邪気に遊び始めたその姿を見ていると、余計なことは言わずにそっとしておこうと思った。
だけど、この子のママはここにいることを知らないかもしれない。
もし探していたりしたら、心配させてしまうことになる。
「ねぇ、リュウ君。ママはどこにいるの?」
このままここに居させていいのかと考えると、どうしても親御さんのことが気になり、リュウ君にそう問いかけた。
「ママは、おうちにいるよ!」
「おうちはどこなの?」
「すぐそこのおうち!二階に引っ越してきたんだ」
ニコリと笑みを浮かべたリュウ君は、そう言うと再びボール遊びに夢中になっていく。
やっぱりこの子は、景子たちが見かけたそこのアパートに引っ越してきた子だったんだ。
「ねぇ景子、あの子、サイトウって、言ってたよね?」
「うん。サイトウリュウって言ってた」
「だよね。私、ちょっとアパートまで行ってくるよ。表札に名前あればわかるだろうし、あの子のママも心配してたら困るし」
「亜紀は本当、思いやりがあってしっかりしてるわー」
「本当、見習わなきゃだね。私と景ちゃんで子供たち見ておくし、行ってらっしゃい」
景子と玲ちゃんにそう言われ子供たちを任せて家を出ると、私はそのまま一人でアパートに向かった。