過ぎる景色を共に
言ってしまった
もう戻れない
あなたの顔を見るのが怖い
きっと二度と話せないだろう

出発まで、まだまだ時間がある
それまでどうしようか

あなたとの記憶が蘇る
こんな時にあの柔らかい唇を思い出す


"いた、探したんだけど"


目の前にあなたがいる
走り回ったのか
息が上がっている


"なんで逃げたの?"


"どうかしてました
すみません、さっきのことは忘れてください"


"忘れない、忘れたくない"


"今まで通りにしてくれるだけで
それだけで十分なので"


"それはできない"


もう冷たくされることすらもないのか
言わなきゃよかった
僕は後悔でいっぱいだった

この重たい空気の中
あなたは初めて聞くくらい
優しい声で言った


"最初は誰にでも笑って
愛嬌のある子だと思った
あたしには持っていない雰囲気持ってて
少し羨ましかった
会社でキスしたのも
本当にしたかったからしただけ
あたしのものにしたいって思った
ご飯に連れてったのも
買い物付き合うとか言ったのも
ただ一緒にいたかったから
冷たくしたのは不安になったから
あたしのことなんか好きな訳ないって思ったから
だから諦めたって言ったの
そんなこと思ってると思わなかったから
…あたしも好きなの"


あなたの一言一言が
鮮明にはっきりと聞こえた

僕はあなたを
ぎゅっと抱きしめた

周りの目なんか気にせず
うつむくあなたに僕はキスをした
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