ひと夏の恋をキミと
エレベーターから飛び出し
突き当りまで行くと
手術室という赤くランプが光っていた。


…間に合わなかった。


「…陽輝君?」


「おじさん…おばさん…。」


姫奈のお父さんとお母さんがいた。


「来てくれたの?」


「…でも、間に合わなかった。」


悔しくて
唇を強く噛み締めたら鉄の味がした。


「本当についさっき入ったばかりなんだ。」


とりあえず座りなさいと
姫奈のお父さんに促されソファへと
腰を下ろした。


「ねぇ、陽輝君。」


俺を呼ぶおばさんの腕には
たくさんのノートが抱えられていた。


「陽輝君はどうして
ここへきてくれたの?
姫奈はあなたを突き放したのに…。」
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