ひと夏の恋をキミと
目の端に涙を溜めて
零れないように必死に
我慢しているのが分かる。


「お父さんとお母さんが大好きだった
姫奈の笑顔が戻った。」


そう言ったお母さんは
久し振りに”心から笑ってる”って顔してた。


そして私の手をぎゅっと握って続けた。


「…治療、受けてみない?」


この数か月
絶対に口にしなかった言葉だった。


実は私もたまに思う事があった。


治療して治ったら
堂々と陽輝に”好き”って言えるのかもって。


「まだ、間に合うと思うの。」


お母さんの瞳に迷いはなかった。


きっとガンの治療なんて
私が想像する何倍も
きついと思う。


でも…
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