ひと夏の恋をキミと
「お母さん、私、受ける…。」


もう迷わない。


「でも、陽輝たちのバイトが
終わってからがいい。
それまでは、何も考えないでいたい…。」


私のわがままに一瞬目を見開いた。


「良いよ。」


そう答えたのはお母さんではなく


「山川先生…。」


穏やかな表情の先生が
カーテンを開けて
私の側へ来た。


「正直、治療は早い方がいい。
だけど、私も驚くほど
進行は進んでいない。
きっと姫奈ちゃんが前向きになってるから
体もそれに応えようと
頑張ってくれているんだね。」


肩の力が抜けるような
そんな笑顔を向けてくれた。


「先生…、ありがとう。
私、ちゃんと頑張るから…。」


「姫奈ちゃんが強い子だって
ちゃんと知ってるから
心配はしてないよ。」
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