総長さんが甘やかしてくる③
突拍子もなく話しかけてきたのは、
「ちなみに俺は毎日部活」
クラスメイトの、稔(みのる)だった。
周りの目なんて気にせずに話をふってきた、稔。
「あー、なんかいきなりごめん。でも、隣の席なのに一度も話したことなかったなと思って」
恐れるどころか、友好的で。
「何部だと思う?」
俺が黙っていても会話を続けようとしてきた。
「正解は、陸上! 短距離」
「にしては体格いいな」
「おっと。舐めてもらっちゃ困るよ。短距離だって筋肉使うからね」
爽やかを絵に描いたようなやつで
正直なところ、苦手だと思った。
稔と話す俺を見た人間の反応が、変化していった。
「拍子抜けだな」
「目が合えば殺されるって嘘かよ」
「普通じゃん」
「やっぱりカッコイイ〜」
周りの俺に対する認識は『おっかないやつ』から『クール男子』になった。
「あ、あの。これ」
女子から手紙を渡されたり連絡先を聞かれることが増えた。