総長さんが甘やかしてくる③


霞の言葉を聞いて、一番に浮かんだのは、稔の姿だった。


『絶交だ』


俺にそう言われて絶望したような表情を浮かべた稔の姿が。


「ねえ、幻。木良は、今は離れてったけど。きっと、あいつも戻ってくるよ」


霞は知らなかった。

木良が、どこでなにをしているかを。


そして。


稔というものが、何者で。


今、俺と関わったせいで

どんな暮らしをしているかを。


「たとえ幻に味方が一人もいなくなっても……。あたしは、最後まで、なにがあっても幻の味方だから!」


そういって

霞の俺を抱きしめる力が強まったとき。


思わず、抱きしめ返してしまいそうになった。


だけど。


「離れろ」


俺は霞を守る自信がなかった。

総長としてチームを守ることが精一杯で。


それだけを考えていきたかったのもあった。


チームに霞は必要なかったし。

俺の傍に置いては、ならないと。


いいわけないと、思った。


「……っ、それが……幻の望みなの?」

「ああ」
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