総長さんが甘やかしてくる③
「林さん」
「…………」
「君が思うほど、いい人間じゃないよ」
「そんなこと言うな。世話になっただろ」
「思うんだ。ミノルを歩道橋から突き落としたのってさ。たぶん――」
「木良」
「……なに」
「戻ってこい」
羅刹は、滅んだ。今夜。永久に。
「無理だ。今更、どのツラさげて戻れっていうんだ。誰が迎えてくれる?」
「俺が歓迎する」
「……あいてないでしょ。幻の隣」
「あいてるさ」
「忠犬は?」
「愁は。副総長ではない」
「でも。実質ナンバー2だろ」
「アイツは肩書に拘りやしない。ただ、走るのが好きなんだ。俺が木良を受け入れると言ったら。アイツも認める」
「……さすが忠犬」
「ただし。霞を巻き込むな」
「姫は一人いればいいもんね」
「そうじゃない。アイツの居場所は、黒梦ではない」
「まあ。たしかにね。うん、それは違うな」
「目を離すなよ。大切なら」