わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「あ、俺、雪の多いところの出身なんですよ。この時期だと、もうすっかり雪景色だからさ」

「あ、そうなんだ。いっそ雪ならいいのに。でも、住んでいると違うんだろうね」

「雪なんてうんざりですよ。寒いし、重いし、いいことないっす」

そうなんだろうね、と一花が相槌をうつ。

「いや、マジで。昼間はまだいいんですよ、遊べるし。っていっても、ガキの頃だけであとは鬱陶しいっつうか、雪下ろしだのなんだの……」

一花はふふっと笑った。

「何ですか?」

「あ、ごめんなさい。なんか、須賀くん、きっとすっごく元気な子供だったんだろうなって思ったら、雪まみれになってるところ想像しちゃって」

「あー、まあ正直、悪ガキだったです。雪まみれっつうか、ひどいと雪着てるみたいになってました」

一花は笑った。きっと、やんちゃで可愛らしい子供だった気がする。須賀も楽しそうな顔をする。それをランプが照らしている。

「田舎だから夜なんかこの時間はもう真夜中みたいに真っ暗ですよ。すっげー静かだし」

「そっか。……でも、うちも割と静かだったなあ。無駄に庭が広いから外の音も入ってこないし」

一花は呟くように言った。

「でも、すごく広いお屋敷なんでしょ?使用人もいるんでしょ?」

「働いてくれてる人はほとんど夜はいないし、みんな大人だから騒がないし……」

お嬢様の周りでうるさくする人なんていなかった。

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