わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「ご両親は?」

「母は早くになくなったの。父は仕事で忙しかったしね」

「ああ、そうか。うん……」

そう言って須賀は窓の外に目をやる。一花も同じように外を見る。窓に、二人の姿が写っている。

「……寂しかったですか?一花さん」

「え?」

「子供の一花さん」

ああ……。

一花は子供だった自分を思い浮かべる。

「……ううん、寂しくなかったな。一人だったわけじゃないし」

そうか、よかった、と須賀が微笑んだ。もしかしたら、彼が寂しかった時があったのだろうか。

「須賀くんは?」

「俺?あー、なんてことないっすよ。母ちゃんいたし。あ、俺んとこ母子家庭なんですけどね」

屈託無く言う須賀に、一花も笑顔を向けた。

雨粒がポツンポツンと窓を濡らし続けている。

「そろそろ出ましょうか。雨がひどくならにうちに駅まで行っちゃいましょ」

二人は店を出ると早足で駅まで急いだ。たいした雨ではなかったがそれでも冬の雨は冷たかった。

「そういえば」須賀が歩きながら言う。「今度のクリスマス、うちの店貸し切ってクリスマスパーティするって聞きました?」

「うん、聞いた。吹子様が主催のでしょう?」

「来ますか?」

「うん、お邪魔するつもり」

「やった、待ってますからね」
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