誤道
本名は、出せない。
ただ、以降は『フミコ』と名乗ろう。

私が生まれたのは、福岡県の空港近くにあった貧しい家。
家族構成は、父と母、姉、兄3人、そして私。
家は、平屋で、7人で住むにはとても狭苦しい。
まず、玄関から入ると目の前には居間へと続くガラス戸で仕切られている。
ガラス戸を開けると、人が3~4人座るとぎゅうぎゅうになってしまうほどの居間。
更に奥には、何も仕切りのない兄弟達の寝室。
私以外の4人が寝る二段ベッドが2つ。
私はまだ生まれて間もない頃だから、寝室ともなる居間で
両親と共に寝ていた。
当時の写真と家族が楽しそうに話す昔話から。

家族みんなのご飯は玄関の真横にある台所。
これは写真にもそんなに写っておらず、どんな所だったか分からない。
ご飯ができるまでの間、父に連れられて兄とお風呂へ。
お風呂は家の中に無い。
玄関から外に出て、我が家と隣家の間に小道がある。
そこを通り抜け、兄弟の寝室の裏側へと続く。
たどり着いた所は、トタンで仕切られ、大人でも少し深めかと言うくらいの浴槽。
冬はとても寒い。お風呂で十分に浸かっても、家の中に入るまでに冷め切ってしまう。

お風呂から上がれば、私は父によってパジャマへ着替えさせられる。
兄弟はダイヤルを回すテレビで番組を楽しむ。
電波が悪ければテレビ上にあるアンテナをいじったり、テレビを叩いたり。
そして母も一通り家事を終えて就寝を迎えるまで居間でゆっくり過ごす。

< 1 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop