濡れた月の唄う夜
「誕生日の予定?」
私はお昼ご飯のパンをかじっていた。
屋上には、数人の生徒たちがお昼休みを過ごしている。
「何もないよ。…え、と、クロス…は?」
期待してないと言えば嘘だが、なんとなく、自分のために動いてくれると素直に思えていない自分がいる。
クロスは、微笑んで私の髪をそっと撫でる。
「君に、プレゼントしたいものがあるんだ」
「え、プレゼント?」
「そう。明日の夜、誕生日をお祝いして、それから」
「な、なに?」
「君と、ずっと一緒居られるように、って僕のためのものでもあるけど」
「私も…」
一緒に居たい。と言いかけて、ふと目のが暗くなった。
クロスが、唇を合わせていた。
そっと離れると、クロスは悪戯をした子供の様な顔で、笑う。
「人前でも、キス出来るようになったね」
言われて、ここが他にも生徒が過ごしている屋上であることを思い出した。
「も、もう…っ!」
結局、プレゼントは何なのか聞けなかったが、既に私は幸せだった。
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